第9章 甘い嘘●
愛美先生は時々強引だ。
それでも、全く興味がない訳ではなかった。
レコード会社で働く友人…。
インターネット百科辞典を読み漁るよりも確かな情報を持っていそうだ。
「橘先生…彼と約束でもあった?」
「いえ、今日は何も。」
“彼”と言われ、佐久間さんの事を考える。
出来る事なら今日はまだ佐久間さんと顔を合わせたくはない。
…一体何を話せばいいのだろう。
気持ちの整理がつかない。
なぜ佐久間さんは嘘をついたのか。
やはり、私には理解が出来なかった。
「付き合ってよ。いいでしょ?」
愛美先生はそう言いながら首をかしげた。
愛美先生の友人ならば、きっと話しやすく素敵な女性なのだと思う。
少しお酒でも飲めば、気持ちが楽になるだろうか。
今日は少し女同士で話をしたい。
「じゃあ…ご一緒させて下さい。」
「うん。喜んで。」
そううなずく愛美先生の顔はあまりにも可愛いく、思わず私の顔からも笑顔がこぼれた。