第9章 甘い嘘●
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愛美先生の中学時代からの友人は、ショートカットにメガネがよく似合うサバサバとした雰囲気の女性だった。
「やだぁ。橘先生、超肌綺麗じゃん。
うちらなんて“出がらし”だから。」
「ユカちゃん、やめてよ。
“出がらし”なりに毎日頑張って化粧してるの!!」
「まなみん、また化粧濃くなったんじゃない?
左官職人みたい。」
「“壁塗り”って言いたいの!?」
カフェレストランに響く二人の笑い声。
完全に私は浮いてしまっていた。
中学時代の友人というのは、こうもフランクに話が出来る相手なのだろうか。
親しい友人など皆無だった私にはよく分からない。
「橘先生ね、アイヴィーのファンなの。」
「マジか!?良い趣味してるね。」
「そうなの。
今日は私達がアイヴィーの魅力をしっかり教えてあげようと思って。」
「まなみんはアイヴィーと言うよりは高杉さんでしょ?
何だっけ…ほら、福岡のライブで目が合ったとか言ってたじゃん?」
「そうなの!!
初めて最前列で高杉さんを拝めたんだから!!
遠征して良かったぁ~!!」
愛美先生はまたうっとりとした表情でワインを飲んだ。