第9章 甘い嘘●
「いつ聴いても大好き。」
愛美先生はうっとりした表情でそう言った。
確かに素敵な曲だと思う。
それは佐久間さんの事を差し引いてもだ。
私は単純にアイヴィーのファンなのだと思う。
もっとアイヴィーの曲を聴いてみたいとすら思う。
それはアイヴィーのギタリストととしての佐久間さんを知りたいという気持ちとは少し違う。
音楽とはこうも心を惹き付ける物なのか。
今まで音楽のない生活をしていた反動か。
自分でも驚くほど、私はアイヴィーという存在に魅了されていた。
「橘先生、今日はこれから空いてる?」
「これから…ですか?」
「そう。
今日はね、中学時代からの友達と会う約束をしてるの。
その娘ね、レコード会社で働いててアイヴィーの大ファンなんだ。
橘先生もアイヴィーのファンならおいでよ。」
「そんな…邪魔しちゃ悪いですよ。」
「邪魔なんかじゃないよ。
橘先生みたいな若いファンは貴重なんだから。
アイヴィーの魅力を教えてあげる!!」