第2章 高校教師
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郵便受けに新聞が投げ込まれる音で目を覚ました。
カーテンの隙間からは眩しい朝の光が差し込んでいる。
昨日とはうって代わり、今朝はずいぶんと過ごしやすそうな気温だ。
窓を開け、よどんでいた部屋の空気を入れ換えた。
引き戸で仕切られた隣の部屋では、まだ男の気配があった。
もしかすると、すぐに目を覚まして部屋を出ていくのではないかと思っていた。
しかし、そう簡単に起きてはくれなかったようだ。
酒の影響からなのか、隣の部屋からは相変わらず男の気持ち良さそうな寝息が聞こえていた。
スーツに着替え、ゆっくりと引き戸を開ける。
昨夜と同じく、ローテーブルの横ではうつ伏せになって眠る男の姿があった。
トイレに起きる事もなく、よくもまあ何時間もこんな硬い床の上で眠れるものだと思う。
身体も痛いだろう。
時計を見ると午前6時。
そろそろ起こすべきか。
私は男の横にしゃがみ込む。
しかし、そのあまりにも穏やかな男の寝顔に、なぜか声をかける気にはなれなかった。