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【年上の男】 R18 ※加筆&修正中

第2章 高校教師


夜になり、仕事から帰って来た母は子犬を見てこう言った。



“うちで犬は飼えないの。”



翌朝、目を覚ますと子犬の姿はどこにもなかった。

押し入れの中、庭の物置、子犬を拾った公園…どこを探しても子犬はいなかった。



母は朝仕事へ出掛けると、夜8時過ぎまで帰る事はない。

誰もいなくなってしまった家で、私は膝をかかえながら泣いた。



しかし、最初は泣いてばかりいた私も、時間が経つにつれ、子犬の事などすっかり忘れてしまった。

あんなにも頭を悩ませて考えた子犬の名前ですら、今はもう思い出す事が出来ない。



なぜ今さら小学2年生の頃の事を思い出すのだろうか。

隣の部屋で眠る男と、子犬が重なって見えたとでもいうのだろうか。



しかし、さっき私が“拾ってきた”のは子犬ではなく大人の男だ。

いや、飼う気もないのだから“拾ってきた”という表現は不適切だろう。



彼は、朝になれば自分の帰るべき場所へと帰る。

そして、もう二度と会う事もなければ思い出す事もない。

あの時の子犬のように。

そしてそれは、亮太と私のように。






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