第9章 甘い嘘●
「小松さんの事でしょ?」
「…え?」
「何だか二人とも、いつもと違ったからさ。
喧嘩でもしたの?」
昼休みの保健室。
いつものように彼女はクリームパンを片手に現れた。
しかし、いつにも増して無愛想な彼女と私はほとんど会話をする事はなかった。
愛美先生が空気を察して話題をふろうとも、彼女は一切口を開かない。
重苦しい空気に息が詰まりそうになった。
彼女の心中を察すれば当然の事だとは思う。
私は今後、彼女とどう関わっていけば良いのだろう。
一人で抱えるには、問題が大きくなり過ぎてしまったように感じた。
「喧嘩ではないんですけど。」
「じゃあ何?」
愛美先生に全てを話すべきなのだろうか。
彼女と村瀬先生の関係を…。
愛美先生であれば彼女の気持ちを汲み取りながらも、正しい道へと導いてくれそうな気がした。
私とは違い、愛美先生は生徒の心のケアにも長けている。
彼女も愛美先生には心を開いている…はずだ。