第9章 甘い嘘●
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「じゃあ、私達の“春”に乾杯。」
今日は少しお洒落なスペインバル。
スパークリングワインで乾杯をする。
今日の愛美先生はいつにも増して笑顔が華やいで見えた。
それもそのはず。
福岡で出会ったという男性。
先日のデート後、スピード交際に発展したそうだ。
「もう、可愛いくて仕方ないの。」
「…“可愛い”ですか?」
「そう。もともと年上がタイプだったんだけどね。
年下の可愛いさにもう夢中。
何だかこう、私に合わせて少し背伸びして“頑張ってる”感じが可愛いんだよね。」
愛美先生の恋人は私よりも年下だという。
大学を卒業したばかりで、都内の広告代理店に務めているそうだ。
「ずいぶん可愛い顔をした男の子だなと思って話しかけたの。
私みたいなオバサン、相手になんてしてくれないと思ってたから驚いた。
今ではほとんど毎日電話したり、メールしたり。
次の休みにはドライブに連れて行ってくれるんだって。」
急な展開に驚きつつも、愛美先生の幸せは私も心から祝福出来る。
愛美先生ならきっと、恋人からもたくさん愛されているのだと思う。