第9章 甘い嘘●
言葉が見つからない。
私は彼女に何と声をかけるべきだろう。
口を開けば、また彼女を否定してしまうような気がした。
しかし、どうすれば良いのだろう。
教師として、彼女よりも長く生きている女として…。
…やはり今の状況が彼女にとってベストだとは思えない。
私は彼女の恋を応援する事など出来ない。
無理矢理にでも村瀬先生と別れさせる方が彼女のためなのか。
しかし、彼女は頑固だ。
「はい、そうします。」と受け入れてくれるような相手ではない。
心を閉ざし、一人で考え込んでしまったら…。
彼女はどこか“危うさ”のような物がある。
ここはただ、彼女の心に寄り添うべきなのか。
「嘘くらいつけよって思った。
…そういう所が嫌い。大っ嫌い。」
彼女はそうつぶやく。
「そうだね。」
きっと彼女には私の声など届いていなかったのだろう。
テーブルの上のチョコレートパフェ。
アイスが溶けて器から滴り落ちようとも、彼女は窓の外をじっと見つめ続けていた。