第9章 甘い嘘●
「村瀬先生から直接聞いたの。」
「…直接って。」
「村瀬先生、何でも教えてくれるから。
“あの人”の話も“あの人”の職場も、全部村瀬先生が教えてくれた。」
唖然としてしまった。
生徒と関係を持つ教師もどうかと思っていたが、自分に婚約者がいる事、そして婚約者の職場まで包み隠さず話すなど考えられない。
もともと村瀬先生とはあまり関わりはなかったが、大人しく真面目な印象を持っていた。
その本性は生徒をたぶらかす悪魔だった。
一体彼女はそんな男のどこに惹かれたのか。
私には全く理解出来ない事だらけだ。
「一度、聞いた事があるんだ。
私と“あの人”…どっちが大事か。」
「…うん。」
「そしたら村瀬先生、何て言ったと思う?」
「…何て?」
「“どっちも大事”だって。」