第9章 甘い嘘●
◆
コーヒーを一口飲みながら、どう話を切り出せば良いのかと考えた。
「この前の事だけど…」そう言ってしまうのはあまりにも唐突だろうか。
彼女は目の前に置かれたチョコレートパフェに一切口を付ける事なく、窓の外をじっと眺めている。
甘い物が大好きな彼女。
この場所に連れて来たのは、ただチョコレートパフェが食べたかっただけではなさそうだ。
「先生、あの車見える?」
突然彼女はそう言って窓の外を指差した。
店内の明かりが窓ガラスに反射し良く見えないが、外の大きな通りには無数の車が行き交っている。
「どの車?」
「あの青いスポーツカー。」
「スポーツカー?あの、後ろに羽みたいなのが付いてる車?」
「そう、それ。」
彼女の言う先には、確かに青いスポーツカーがあった。
反対車線にハザードランプを点滅させ、停車している。
運転席には人が乗っているようだ。
その車が一体どうしたというのだろう。