第9章 甘い嘘●
「これからさ…」そう言いかけた時だった。
彼女がふぅとため息をつきながら「先生暇なの?」と無愛想に聞いてきた。
「暇…ではないけど、小松さんと少し話をしたいなと思う。」
「マジで?」
「うん。嫌?」
「じゃあ、ちょっと付き合ってよ。」
彼女は私の腕を強引に掴み、足早にどこかへと向かう。
一体どこへ連れていくつもりか。
人混みの中をかき分けるように腕を引かれ歩く。
しかし、こうして二人の時間を与えられたのだから、しっかりと向き合いたい。
私はやはり彼女が可愛い。
決して彼女の恋を…彼女自身を否定したかったわけではない。
それだけは伝えたい。
「どこに行くの?」
「黙ってついて来て。」
彼女が向かった先…それは道路沿いにあるカフェだった。