第9章 甘い嘘●
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土曜の夜のデパートは買い物客でにぎわっていた。
もともと休日に外へ出るという事があまり無かった私だが、昨日の愛美先生の“美容講座”のせいもあってか、デパートのコスメカウンターへ行ってみようという気持ちになった。
店員に勧められるがまま、フルアイテムを購入する。
今まで化粧に全く興味がなかったのが嘘のよう。
案外、私は流されやすい性格なのかもしれない。
しかし、それはそれで良いと思えた。
少し物事を柔軟に捉えられるようになった。
それは間違いなく佐久間さんのおかげだ。
今朝の“出来事”を思い出し、思わず笑みがこぼれてしまう。
卑屈だった私の心は、佐久間さんによって変わったのだ。
ショップバックを手に持ち、エスカレーターを降りる。
ランジェリーコーナーにも脚を運んでみたが、あまりにも派手な下着の数々に圧倒され、手を出す事が出来なかった。
今日はもう帰ろうか。
腕時計を見ると午後8時。
佐久間さんは仕事で遅くなると言っていた。