第9章 甘い嘘●
目が覚めたのは、午後0時を過ぎてからだった。
乱れたシーツにくるまりながら、私達は心地好い眠りの中にいた。
昼食の目玉焼きは焦がさずに作れた。
ダラダラとテレビを観ながら二人で過ごす休日。
こんな日が来るなんて、出会った頃には考えられなかっただろう。
シーツを洗いながら、食器を片付ける。
身支度を始める佐久間さんに少しの寂しさを感じつつも、心の中は幸福で満たされていた。
夕方になり、仕事へ出掛けていく佐久間さんを玄関で見送った。
目と目を合わせ、鼻先をそっと触れ合わせる。
頭の後ろへと回された温かな手。
優しい口付けをもらった。
「足の爪、綺麗だね。」
そう笑いながら佐久間さんは玄関のドアを閉めた。
昨日の夜、愛美先生に塗ってもらった桜色のマニキュア。
まるでガラスの靴を手に入れたシンデレラのように、私の胸は高鳴っていた。