第8章 身体の関係●
リビングのドアを開ける。
当然だか、そこに佐久間さんの姿はない。
キッチンを見るとビールの空き缶が一本、水切りカゴの中で逆さになっていた。
昨日の夜はここでビールを飲み、一人で過ごしたのだろう。
正直言って会わせる顔などない。
何と言って詫びれば良いのか分からない。
私は本当に自分勝手だ。
「残業で遅くなって、そのまま同僚の家に泊まらせてもらったの。」
そう嘘をつこうか。
いや、ここは正直に話すべきだろう。
しっかりと向き合わなければならない。
決して佐久間さんとの時間をないがしろにした訳ではない。
もちろん佐久間さんと、したくなかった訳ではない。
それだけは分かって欲しい。
息を殺し、寝室のドアを開けた。
カーテンの隙間から朝の日差しが入り込んでいる寝室。
ベッドには毛布に顔を埋めて眠る佐久間さんがいた。
その横ではいつものようにコロが丸くなってゴロゴロと喉を鳴らしていた。