第2章 高校教師
鍵を掛けずに飛び出した私が悪かったのだろうか…。
見ず知らずの男は私の部屋で寝息を立てはじめていた。
狭い1DKの部屋に2人きり。
時計を見ると午前2時半を少し過ぎた所だった。
動揺する私の心とは裏腹に、気持ち良さそうに眠る男。
ローテーブルの横でうつ伏せになりながら、すやすやと寝息を立てている。
隣の部屋…202号室と間違えたのだろうか。
それとも、そのまた隣の部屋か。
いずれにせよ、男の目的の部屋は私の部屋などではないはずだ。
「あなたのお知り合いの方が私の部屋で寝てしまっているので、迎えに来ていただけますか?」と、一部屋ずつ聞いてまわろうか…。
いや、さすがにこんな時間では非常識だ。
外から見た限り、隣の3部屋はいずれも電気が消えていた。
チャイムを鳴らす事自体、迷惑だろう。
私は男の横にしゃがみ込む。
部屋の明かりにに照らされる男の顔。
整った顔立ちではあるが、私よりもずいぶん年上に見える。
30代後半…もしくは40代。
男性は苦手だったが、不思議と男に不快感はなかった。