第2章 高校教師
「何号室ですか?」
2階へとたどり着いた私は、男の横顔をのぞきながらそうたずねた。
狭い通路に並んだ部屋のドア。
私が住む201号室の奥には202号室、203号室、205号室の3部屋がある。
その3部屋のいずれかが目的の部屋だろう。
壁を伝いながらゆっくりと通路を進んでいく。
男のか細い声が再び耳元で聞こえてきた。
「………ありがとうございました。
もう、ここで結構です。」
「え?」
「…この部屋です。」
「いえ、ここは…。」
男は私の手を振りほどく。
壁にもたれかかったと思った次の瞬間、部屋のドアを勢いよく開けた。
そこは201号室。
私の住む部屋だ。
「すいません。ここは私の部屋です。」
「…いえ、もう大丈夫ですから。」
部屋へと入っていく男の腕を掴む。
しかし、男はそんな私の手をすり抜け、倒れ込むように部屋の中へと入っていってしまった。