第8章 身体の関係●
今まで考えた事もなかった。
私の毎日の化粧はファンデーションを塗り、気が向けば口紅を塗る程度だ。
はたしてそれが化粧と呼べるのかも分からない。
そもそも化粧など学校の必須科目ではなかった。
何をどこに使っていいのかも分からない。
目を丸くさせている私の顔を見て、愛美先生は楽しそうに微笑んだ。
「アイライン、引いた事ある?」
「…アイライン?」
「大人の女性はアイラインがマストだよ。
あと、眉毛も顔の印象が変わりやすいし、流行にも左右されやすいからお手入れは大切。
むしろファンデーションをもっと薄くしてポイントメイクを強化した方が良いよ。
橘先生はまだ若いから肌綺麗なんだし。」
マニキュアを塗り終えた愛美先生は、鏡台からメイクボックスを取り出す。
一体何をするつもりなのだろう。
愛美先生は私の正面へ座ると、突然手鏡を手渡してきた。
「これが今の橘先生の顔。
これから生まれ変わらせてあげるから。」
そう言って愛美先生は私の顔に化粧を施してくれた。