第8章 身体の関係●
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「それで?家に帰らないの?」
「恥ずかしいんですけど…その…何と言うか心の準備がまだ…。」
「自分から誘っておいて何言ってるの?
彼、待ってるんじゃない?
橘先生が帰って来るのを。」
「そうなんですけど…。」
愛美先生の家は白を基調としたお洒落なワンルームだった。
仕事を終え、家路につく愛美先生を校門の前で待ち伏せた。
「今日は家に帰れないんです!!」
そう切迫した私の言葉を聞いて、愛美先生は快く自宅へ招いてくれた。
宅配のピザを食べながら今朝の出来事を話す。
ワイングラスを片手に、愛美先生は頭を抱えていた。
「橘先生って大胆なのか繊細なのか分からない。」
「はい…。自分でもよく分かりません。」
「どうしてそんなに消極的なの?」
「それは…」
言葉を詰まらせる。
愛美先生の言う通り、私はすぐ消極的な思考になってしまう。
それは今に始まった事ではない。
幼い頃から私はいつだって後ろ向きだ。