第8章 身体の関係●
「今日は早く帰って来られるから。」
「はい。」
「だから、今日しようか。」
「…え?」
「セックスしよう。」
「…今日ですか?」
「うん。俺もしたかったし。」
弾むような声で、佐久間さんは笑った。
鞄を床に置き、部屋着姿の私を佐久間さんはそっと抱き寄せる。
温かい腕の中、トクントクンと胸の鼓動が高鳴った。
その音は佐久間さんの胸の鼓動と重なり合う。
抱き締められるだけで私はこんなにも幸せを感じられる。
欲張りなはずの私の恋。
「じゃあ、行ってくるから待っててね。」
「は…はい。」
あまりにも近いその距離に目を合わせる事が出来ない。
それでも、佐久間さんが笑っている事は分かった。
佐久間さんの手の平が私の頬に触れる。
驚いた私は、佐久間さんの顔を見上げた。
その瞬間、柔らかな唇が重なった。
唇が触れ合うだけの優しいキス。
「行って来ます。」
玄関のドアが閉まる。
パタンという音と同時に、私は床へ座り込んでしまった。