第8章 身体の関係●
まるで駄々をこねる子供の様だ。
自分の口から出てしまった言葉に驚く。
また佐久間さんを追い詰めてしまった。
しかし、恥ずかしながらこれが本心だ。
嘘偽りの無い私の想い。
佐久間さんは困った表情を浮かべながら、考えこんでしまった。
やはり…佐久間さんは私と身体の関係をもつ事を避けているのだろうか。
だとしたら、その理由は何だ。
私に魅力が無いからなのだろうか。
「何か…ごめんね。」
「え?」
「俺、忘れてた。」
「“忘れてた”って…。」
「そうだよね。セックスね。」
そう柔らかに微笑む佐久間さんの顔を見て、唖然としてしまった。
“忘れてた”
何とも佐久間さんらしい。
どこまでもマイペースでつかみ所の無い人だ。
決して私を避けていた訳ではない。
安堵からか、思わず声を出して笑ってしまう。
そんな私を見て、佐久間さんも少年のような笑顔を見せる。
先ほどまでの焦りや不安感が馬鹿馬鹿しく感じた。