第8章 身体の関係●
「あ、先生おはよう。」
「おはようございます。」
靴を履き、コロを愛おしそうに抱き上げる笑顔の佐久間さんがいた。
手元の鞄は小さく、出張ではない事は確かだ。
聞きたい事は明白だった。
言葉を選んで…とは思うが、ここはストレートに言うしかない。
「どうかした?」と首を傾げる佐久間さんの瞳をじっと見つめる。
恥ずかしさで顔が熱くなるのが分かったが、もう後には引けない。
「…あの、どうして“してくれない”んですか?」
「ん?何の事?」
「何の事って…
“セックス”です。
私達…恋人同士なのに何もないなんて。
同じベッドで毎日眠っているのに…。」
「先生どうしたの?いきなり。」
「“先生”なんて言わないで下さい。
私は橘美波です。
佐久間さんには…恋人には名前で呼んでほしい。」
私の声に驚いたのか、コロは佐久間さんの腕をすりけてリビングへと逃げて行ってしまった。