第8章 身体の関係●
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微睡みの中、遠くから佐久間さんの声が聞こえた。
「じゃあ、行ってくるね。良い子にしててね。」
コロに話し掛けているのだろうか。
ニャーニャーと甘えた様に鳴くコロの声がした。
寝返りをうち、枕元の目覚まし時計を見ると午前6時。
カーテンの隙間からは朝の眩しい光が差し込んでいる。
今日はこんなにも早く仕事へ出掛けるのか。
昨日の夜、いつもより早く眠りについたのも納得だ。
ベッドから起き上がり、急いで玄関へ向かう。
やり場のない不安感と焦り。
何もないまま、こうして朝を迎えてしまった。
やはり…佐久間さんは私と身体の関係をもつ事を避けているのだろうか?
朝からする話ではないと思う。
しかし、このまま“何もない恋人”でいる事には耐えられなかった。
臆病なくせに、気になり出すと確かめたくなってしまう厄介な性格。
佐久間さんの考えを聞かせてもらおう。
玄関へと続く長い廊下を駆け足で向かった。