第2章 高校教師
「2階…ですか?」
「………はい…。」
うつむく男の横顔をチラリと見たが、その顔に見覚えはなかった。
男はアパートの住人ではない。
そもそも2階の住人は全て独身女性だ。
男性の住人などいない。
しかし、彼女達の交遊関係までは把握していない。
もしかすると、友人か家族…それとも恋人か。
どちらにせよ本人が2階と言っているのだから、連れて行くしか他ない。
ふらつく男の身体を支えながら、アパートの階段をゆっくりと上った。
私の部屋は201号室。
階段を上ってすぐの部屋だ。
カンカンと男の靴が階段を鳴らす。
何とも歩きにくそうな先の尖った男の靴。
誤って足を踏み外さぬよう、手すりにつかまりながら男の身体を支える。
こんな先の尖った靴を履くのはホストくらいだろうなと勝手な憶測をしながら、見ず知らずの男と2人で階段を上った。