第8章 身体の関係●
洗面所で濡れた髪を乾かし、薄めにリップクリームを塗る。
初めて触れるであろう佐久間さんの唇を想像し、わずかに頬は赤くなる。
今日は人生で特別な日。
大きな不安と小さな期待を胸に秘めながら、いつもの下着を身に付けた。
「…すみません。遅くなってしまって。」
「ううん。ゆっくり入ってて良かったのに。」
「片付け、手伝いますよ。」
「もう終わったから大丈夫。」
優しく微笑みながら、佐久間さんは冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
「先生も飲む?」
「はい。」
少しお酒が入っていた方が緊張せずにすむだろう。
そんな心遣いだと思い、佐久間さんから缶ビールを受け取る。
「じゃあ、俺も入ってこようかな。」
「…あ、はい。」
そう、うつむきながら返事をした。
言葉には出来ぬ恥ずかしさ。
覚られぬように平静を装う。
これから、私はどうすればいいのだろう。
とりあえずは缶ビールを飲んだ方が良さそうだ。
コロが気持ち良さそうに眠るソファーへと腰を下ろした。