第8章 身体の関係●
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ネイルのしていない爪。
凹凸のない身体。
顎のラインでパツリと切り揃えてある黒髪。
バスルームの鏡に映る自分に、女としての魅力が微塵も無い事を改めて感じた。
それでも…私は佐久間さんの恋人だ。
佐久間さんが私を選んでくれたのだからと自分に言い聞かせる。
あんなにも悩んでいたのが嘘のように、今は不安で仕方ない。
結局私は自分への自信の無さから、どんな状況においても不安から抜け出せないでいるのだ。
身体の関係が無いのも不安。
いざ、その時がきても不安。
私の恋は自分勝手でワガママで、欲張りだ。
いつもよりも念入りに身体を洗った。
あまり長いと佐久間さんの気が変わってしまうかもしれない。
覚悟は出来ていたつもりだったが、いざこの状況になってしまうと気持ちは焦り、落ち着きがなくなる。
これは自分が望んでいた事だったはず。
頬をピシャリと両手で叩き、気持ちを奮い立たせた。