第8章 身体の関係●
そんな事は聞きたくない。
佐久間さんはそんな人ではない。
高杉さんは私をからかいたいがために作り話をしているのだ。
全く悪趣味な人だ。
綺麗な顔立ちとは裏腹に、心はひねくれている。
まるで中学生の男の子…。
いや、そんな可愛いものでもない。
40歳を過ぎた大人の男性がする事とは思えない。
「でもさ、先生は不安じゃないの?」
「…不安?」
「だってサクちゃんとは恋人なのに抱いてもらえてないんでしょ?」
まるで追い討ちをかけるような高杉さんの言葉に夕食を作る手が止まった。
いいかげんな事ばかりを言っていると思い聞き流していたが、さすがにこればかりは無視出来ない。
“不安なんかありません”
そう応えながら包丁を向けてやりたい。
しかし、高杉さんの言う事も一理あった。
私は今まで幾度となく佐久間さんとベッドを共にしているにもかかわらず、一度も身体の関係をもった事がない。
それどころか、唇にキスすらした事がないのだ。