第7章 想い
「ところでさ、二人って付き合ってるの?」
突然何を言い出すのかと、持っていたお玉で頭を叩きたくなった。
和やかなムードが一変する。
一体この男はどこまでこちらのペースを乱せば気がすむのだろう。
ペースを乱すどころの話ではない。
空気が読めない。
人として致命的とも言える欠陥人間。
先ほどまで感じていた彼の面白さなどまやかしだ。
やはり私は高杉さんが苦手なのだ。
そんな事よりも佐久間さんだ。
佐久間さんはこの問いかけに何と返すのだろう。
“好き”でもない“愛してる”でもない関係。
“大切”という言葉を選んだこの関係…。
正直…あの日から不安でたまらなかった。
本当はきちんと確認しておきたかった。
私達は恋人なのか。
もし恋人ではないと言うのなら、この関係を一体何と呼ぶのか…。
しかし、私には確かめる勇気などなかった。
“俺は先生が大切”
その言葉だけを信じていたが…。