第7章 想い
高杉さんは完全にこちらのペースを乱してくる。
調子が狂う。
そんな自分自身にも腹が立つ。
早く帰ってもらいたいが、そんな素振りは全くない。
高杉さんは冷蔵庫を開け、中から缶ビールを取り出した。
「明日は久しぶりに休みだからさ。
今日はサクちゃんと飲みたかったんだよね。」
お酒を飲むという事は今日は泊まっていくつもりなのだろうか。
そうは言えども肝心の佐久間さんはまだ帰って来ていない。
こうして二人だけの無意味な時間だけが過ぎていく。
場が持たない。
高杉さんが帰らないと言うのなら、せめて佐久間さんには早く帰って来てほしいと思う。
このまま高杉さんのペースに飲み込まれ続けるのは絶対に嫌だ。
「俺達こう見えて“売れっ子”だから。
忙しいんだ。」
「…そうみたいですね。」
「俺達の“仕事”知ってる?」
「美容師ですよね?」
「そうそう、美容師。」