第7章 想い
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高杉さんはソファーから立ち上がると、私のいるキッチンへとやって来た。
キッチンカウンターから身を乗り出し、夕食の支度を続ける私を興味深そうに眺めている。
そんな高杉さんの視線がうっとうしい。
一体この人は何がしたいのだろう。
愛しい佐久間さんの友人であり、仕事仲間。
そうは言っても、正直私には“関わりたくない人”だ。
トゲのある言動で、また私はからかわれるに違いない。
現に高杉さんは私の顔をまじまじと見つめながら何か言いたけだ。
「タバコの後のキスって美味いんだよ。」
思わず顔が赤くなった。
なぜこの人は突拍子もない事を言い出すのだろう。
わざと言っているとしか思えない。
やはり私はからかわれているのだ。
「試してみる?」
「結構です。」
「何か怒ってるの?」
「…いえ。」
「はい、そうです。あなたに怒ってます。」などとは言えない。
少なくとも男は佐久間さんの友人であり、仕事仲間だ。
最低限の大人の対応をしようと努力はしてみるが、いつまでもつかはわからない。