第7章 想い
「もうすぐサクちゃん帰って来るよ。」と言いながら、男はタバコに火を着ける。
まるで心の中を土足で踏み荒らせれたような気分だった。
私はこの人が苦手。
そうはっきりと感じる。
自分の中の自己防衛本能が“危険”であると言っているのだ。
不信感と不快感。
佐久間さんとの一時を邪魔される。
そう思い、自然と表情は強ばった。
「相変わらず怖い顔してるなぁ。
もっと口角上げて。笑顔、笑顔。」
「あの…佐久間さんに何かご用ですか?」
「いや、会いたかったから会いに来ただけ。
さっきまで一緒だったけど。」
「一緒にいたって…」
「あれ?聞いてない?
俺達“仕事仲間”でもあるから。」
高杉さんはそう笑いながらタバコをふかし続ける。
“仕事仲間”という事は、高杉さんも美容師なのだろうか。
確かに見た目の雰囲気は佐久間さんとどこか似ている。
整った顔立ちの美しさは佐久間さん以上。
苦手なはずなのに惹き付けられる容姿。
それも高杉さんを“危険”だと思わせる要因の一つだった。