第7章 想い
“俺は先生が大切”
そう言われたあの日から、私はこのマンションで生活をしている。
アパートの部屋はそのままに、少ない荷物を持って引っ越してきた。
以前、佐久間さんが言っていた通り“セカンドハウス”のようなもの。
何かトラブルがあった時は帰ればいい。
トラブルなど起きてほしくはないが、帰る場所があるというのは気楽で良かった。
正直、佐久間さんとの新生活は充実しているように感じた。
朝起きると隣には気持ち良さそうに眠る佐久間さんとコロがいる。
そんな愛おしい人の顔を浮かべながら仕事へ向かう。
仕事を終えて帰宅すれば、夕食の支度をしながら佐久間さんの帰りを待つ。
他愛のない会話で笑い、夜になれば同じベッドで眠る。
もちろん手を繋いで…。
そんな恋人同士のような毎日。
“好き”でもなければ“愛してる”でもない毎日。
“大切”という言葉を選んだ真意は謎のままだが、私が“欲張り”さえ言わなければ、私達は何の問題もない毎日を過ごせていた。