第7章 想い
「さっきから変。」
「そんな事ないですよ。」
「ごめんね、聞きたくない話だったかな。」
「いえ…。」
静かな保健室に、コーヒーカップを置く音が響いた。
冷静なふりをしてはみるが、心はひどく動揺していた。
この事を知ったら、彼女は傷付くだろう。
私は…一体どうすれば良いのだろうか。
彼女が傷付かずにすむ方法…。
そんな事を考えるが、愛美先生の話が本当であるならば、やはり彼女は辛い思いをするだろう。
婚約者のいる相手と付き合うなど、それこそ泥沼になりかねない。
いや、問題は彼女側だけではない。
婚約者がいるにも関わらず、生徒と付き合う村瀬先生がおかしいのではないか。
彼女の事は遊びだったのだろうか。
それとも、婚約者は彼女を守るためのカモフラージュだったのだろうか。
様々な憶測が頭をよぎり、混乱する。
楽しいはずの保健室での一時。
その後に話した愛美先生との会話が思い出せぬほど、私は“彼女”の事が心配でたまらなかった。