第7章 想い
「村瀬先生とは机が隣だから。
村瀬先生と小松さんとのやり取りはよく見るの。」
「…。」
「小松さん、村瀬先生の事好きみたい。
態度でわかるの。」
そんな事かと正直ほっとした。
愛美先生は彼女と村瀬先生との関係を知っているわけではない。
それなら私も「気のせいですよ。」と笑って話をはぐらかす事が出来る。
もともと彼女は自分の事をあまり話したがらないタイプだ。
彼女の事を知っているのは私だけ。
それならば、取るに足らない話題だ。
「気のせいですよ。」
「そうかな?私、結構するどいよ。」
「彼女に限ってそんな事…」
「でも、もしそうだとしたら小松さんがかわいそう。」
「…どうしてですか?」
「だって、村瀬先生には彼女がいるから。」
コーヒーカップを持つ手が止まった。
村瀬先生の“彼女”は小松加奈だ。
愛美先生の言う“彼女”とは小松加奈の事ではないのか。
いや、小松加奈ではない他の誰か…。
愛美先生はそう言っているのだ。