第7章 想い
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「そっかぁ…、高杉が来たんだ。」
名古屋への出張を終え、帰宅した佐久間さんに昨日の出来事を話した。
「ごめんね、驚いたよね。」と、いつものように佐久間さんは笑う。
しかし、そんな佐久間さんの優しい笑顔を見ても私の心はどこかざわついていた。
それはきっと男の心ない言葉の数々…。
冗談とは言っていたが「俺はサクちゃんの彼氏。」など、私にはとても笑い話には聞こえない。
それは、自分と佐久間さんとの関係が未だに曖昧なものだからだろう。
はっきりとした“何か”が欲しい。
会えるだけでも良かったというのは、もう遥か昔の話。
ずいぶんと欲深くなったものだと、自分の恋心に嫌気すら感じた。
「ねぇ、先生。いつ引っ越すか決めた?」
「…引っ越しですか?」
「そう。通って来るのも大変でしょ?
引っ越すなら早い方がいいよ。」