第7章 想い
男は私の横をすり抜け、廊下の奥の部屋へと入っていった。
私が佐久間さんから立ち入る事を禁じられている部屋だ。
男は私の様子を伺うように部屋のドアを閉める。
よほど見られたくない物があるのだろうか。
私は見る事が出来ないが、男は見る事を許されている物…。
心にはわずかな嫉妬心が芽生えたが、やはり男に対しての不信感が勝ってしまった。
数分後、男は部屋の中から“何か”を持ち出してきた。
困惑する私に、男は微笑む。
「もっとおしゃべりしたいところだけど、今日はこれから仕事だから。
また今度ゆっくりね。
俺の名前は高杉誠。
きちんと覚えておいて。」
男はそう言い残すと部屋を出て行ってしまった。
今のは一体何だったのだろうか…。
ただただ困惑するばかりの私の足元へ、コロがすり寄って来る。
コロもまた、私と同様に男へ不快感を覚えたのだろうか。
男が出ていった玄関の方を警戒するように、じっと見つめていた。