第7章 想い
キッチンに立ち、食事を作る。
疑いの気持ちを消し去ろうと、包丁を握った。
正直、もっと佐久間さんの事を知りたいとは思う。
しかし、余計な詮索をして関係が終わってしまうのだけは避けたい。
「…しまった。」
「どうかしました?」
「シャツ…クリーニングに出すの忘れてた。」
「私でよければ洗っておきましょうか?」
「…いいの?」
「それくらいさせて下さい。
きちんとアイロンもかけておきますから。」
「じゃあ、お願いしようかな。」
柔らかに微笑む佐久間さんからシャツを受け取った。
甘くスパイシーな香りが鼻をつく。
愛しい…佐久間さんの匂い。
私は…佐久間さんの“恋人”になれる日は来るのだろうか。
今こうして食事を作り、シャツを洗い、手を繋ぎながら眠る事は恋人としての行為ではないのだろうか。
佐久間さんにとって私はどんな存在なのだろう。
確かめる勇気など今の私には…ない。