第7章 想い
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「明日は名古屋で仕事なんだ。」
「そうなんですか…。」
「帰ってくるのは明後日かな。
先生、今日も泊まっていくんでしょ?」
「あっ…はい。」
少し小さめのスーツケースに荷物を積めながら、佐久間さんはいつものように笑う。
私の頭にあったのは、昨日の愛美先生との会話。
“身元は確かなの?”
不安げな表情で首をかしげる愛美先生の顔が頭に浮かんだ。
「あの…佐久間さん。」
「ん?」
「佐久間さんの働く美容室って、どこにあるんですか?」
「どうしたの?急に。」
「…髪型、変えたくて。
良かったら佐久間さんに切ってもらおうかと…。」
「先生は今の髪型が似合ってるよ。」
そう言って顔をほころばせながら、佐久間さんは荷造りを続ける。
上手く話をそらされてしまったような気がした。
やはり佐久間さんは愛美先生の言う通り、美容師ではなくホストなのだろうか。
いや…ホストの出張など聞いた事がない。
全ては私の思い過ごし…そう信じたい。