第7章 想い
「美容師なんだったら、お店に行ってみたら?」
「そんな事…。」
「いいじゃない?
お仕事中の彼の姿、見たくない?」
「それは…見てみたいですけど。」
「“来ちゃった”って笑顔で行くの。」
「きっと、忙しいと思うんです。」
「目的は髪をカットしてもらう事じゃなく、彼が本当に美容師かどうかだから。
忙しかったら適当に理由つけて帰ってくればいいんだよ。」
「そんな興信所みたいな事…。」
「もしかして、本当はホストだったりして。」
満面な笑みを浮かべながら、愛美先生はそう言った。
美容師ではなくホスト…。
そう言われると、佐久間さんはどちらと言えばホストに見えるかもしれない。
それでも、佐久間さんを疑う気にはなれなかった。
彼が“美容師”だと言っているのだから、私はそれを信じている。
愛美先生の意見は一理あるが、佐久間さんは都会の売れっ子美容師であり、経営者だ。
決してホストなどではない。