第7章 想い
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「ふーん。
そんな事があったんだぁ。」
愛美先生は美味しそうにジョッキのビールを飲み干す。
いつもの焼き鳥屋。
放課後、なかば強引に誘われ、私は佐久間さんとのこれまでを包み隠さず話した。
「付き合っているわけではないんですけど…。」
「そうね。」
「その…お互い気持ちを打ち明けた事がないんです。
例えば“好き”だとか“付き合おう”だとか…。」
私の言葉に、愛美先生はうつむき、黙りこくってしまった。
おかしな話をしてしまっただろうか。
しかし、残念ながらこれが真実だ。
私達は“まだ”恋人同士などではない。
お互いの家を行き来し、手を繋いで眠っただけの仲だ。
もちろん、“これから”があるのならば恋人になりたいとは思う。
佐久間さんを思う気持ちはもう簡単に止められるものではない。
会う度に好きになる。
佐久間さんはやはり不思議な魅力を持った人なのだ。