第7章 想い
「何?面白そうな話してるじゃない?」
と、愛美先生が保健室へ戻って来た。
「私にも教えてよ。
橘先生の“好きな人”の話。」
「いえ、なんでもないですよ。」
「私だって知りたいよ。」
「愛美先生には…」
「私には?私には知られたくない話?」
そういう訳ではないが、いかにも恋愛経験の多そうな愛美先生にするような話ではない。
二人に注目され、思わず顔が赤くなる。
どうにかして話題をすり替えたいが、残念な事に私にはそんな話術などない。
どうしても隠し通したいという訳ではないが、もし伝えるのなら、やはり愛美先生には後からきちんと話したい。
「後からお話しします。」
そう言いかけた時だった。
「橘先生にだってプライベートがあるんですから、あまり詮索しないであげてもらえます?」
彼女がそうピシャリと言ってのけた。