第2章 高校教師
男の髪は肩まであり、柔らかそうなウェーブがかかっていた。
その身体つきからして20代から40代といったところだろうか…。
黒い服に身を包んだ細身の男。
アパートの住人のような気もするが確証は持てない。
何せ肝心の顔が見えないのだ。
バックライトの明かりを頼りに、ゆっくりと男へ近付く。
こんな所でうずくまっているのだから、どこか具合いが悪いのだろうか。
「…どうかされましたか?」
そう声をかけるが、男は眠っているのか返事はない。
どうするべきだろうか…このまま放っておいても良いものだろうか。
対応に頭を抱える。
「あの…立てますか?」
そう問いかけるが、やはり男は何の反応も示さない。
しかし次の瞬間、ふわりと吹いた生暖かい風にのって、男の身体から酒の匂いが漂ってきた。
思わず顔を背けたくなるような強烈な酒の匂い。
その匂いは、普段酒を飲まない私にとっては不快な匂いでしかなかった。