第2章 高校教師
足早にアパートの門を出る。
その瞬間、中庭の片隅に何かの気配を感じた。
いつもは何もないはずの植木部分。
影になり、外灯の明かりでははっきりと確認する事が出来ないが、確かに何かがいるようだった。
人か…それとも動物か。
いや、ここは都会の住宅街。
キツネやシカが現れる北国の田舎町とは違う。
昔から臆病な性格だったため、心霊などその類いの話は一切見聞きしない方だった。
しかし、一度気になってしまったら確かめずにはいられない厄介な性格でもある。
気にせず通り過ぎれば良いのだが、ここはアパートの敷地内。
もしそこにいるのが人ならば、それはアパートの住人だろう。
近所付き合いなどほとんど無かったが、ここは全8世帯の小さなアパート。
どの部屋に誰が住んでいる位は何となく分かる。
もしかすると、誰かが倒れているのかもしれない。
下の階には確か、高齢の女性が1人で暮らしていたはずだ。
部屋着のポケットから携帯電話を取り出し、バックライトで辺りを照らす。
ぼんやりと照らされる中庭の植木。
その植木の下を見て驚く。
そこには膝を抱えてうずくまっている男がいた。