第6章 距離感
「…眠れない?」
「いえ…。」
「どうしたの?」
「言いにくいんですけど…」
「うん。」
「一緒にベッドで寝ませんか?」
私の人生において、恋人でもない男性にこんな言葉をかける事になるとは思ってもいなかった。
その言葉に私自身も驚いているが、佐久間さんも驚いたのか、しばらく目を丸くしていた。
「…一人じゃ寂しいの?」
「そういう訳じゃないですけど。」
「じゃあ、お言葉に甘えて一緒に寝ようかな。」
「…はい。」
甘えるも何も、ここは佐久間さんの家なのだから主導権は佐久間さんにある。
それなのに、少し恥ずかしそうにはにかむ佐久間さんは、何だかとても可愛いく見えた。
身体の関係を迫った訳ではない。
ただ、一緒に眠ろうと言っただけ。
それなのに…言葉には出来ぬ恥ずかしさがあった。