第6章 距離感
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佐久間さんのベッドは、一人で眠るには大き過ぎるキングサイズのベッドだった。
シャワーを浴び、佐久間さんから借りたTシャツを着る。
佐久間さんのシャンプーは、ほのかに甘いシトラス系の香りがした。
ベッドにもぐり込み、深呼吸をする。
佐久間さんは言っていた通り、ソファーでコロと眠るようだ。
こんなに大きなベッドなら、二人で眠っても何の問題もないだろうに。
そもそも私のシングルベッドで添い寝をした事があるのだから、今さら別々に眠るのもおかしな話なのだ。
私は…佐久間さんにとって、どんな存在なのだろう。
会えるだけで良かったはずなのに、どんどん“欲張り”になっているような気がした。
恋人になりたい。
そう思うのは愚かな事だろうか…。
私はベッドから起き上がると、ゆっくりと寝室のドアを空ける。
リビングにあるソファーでは、佐久間さんがコロをお腹の上に乗せたまま眠っていた。
毛布をかけてはいるが、肌寒そうに見える。
「…佐久間さん。」
そう呼びかけると、佐久間さんはすぐにこちらを向いた。