第6章 距離感
「…分かりました。」
そう思わずうなずいてしまった私に、佐久間さんは満面の笑みを浮かべた。
佐久間さんは本当に私を喜ばせる天才だ。
そんな佐久間さんに、私は従う他ない。
“恋人”ではないが“好きな人”。
その距離感がもどかしい。
佐久間さんは私の事をどう思っているのだろうか。
こうして自宅に招き、泊まっていくよう勧めてくるのだから、決して嫌われてはいないようだ。
私に好意を持ってくれているには違いない。
しかし、それは女としてなのだろうか…。
ただの友人としてなのだとしたら、佐久間さんはかなりのプレイボーイだ。
プレイボーイ…。
子供のように無邪気に笑う佐久間さんには何とも似つかわしくない言葉。
どちらにせよ、今日は泊まらせてもらおう。
佐久間さんの言う通り、今から帰るには時間が遅すぎる。