第6章 距離感
「俺は泊まっていってもらっても構わないよ。
俺も先生の家に泊まったしね。」
「あれは…。」
「コロもその方が良いと思うよね?」
佐久間さんに撫でられ、コロはゴロゴロと喉を鳴らしている。
確かに佐久間さんは私の家に泊まった事がある。
しかし、それは止むに止まれぬ状況であったからだ。
恋人でもない男性の家に泊まるなど、私には考えられない。
「…タクシーで帰ります。」
「タクシーで帰るには遠いよ。
車で送ってあげたい所だけど、お酒飲んじゃってるから無理なんだ。」
佐久間さんの言う通り、タクシーで帰るには距離がありすぎる。
一体いくらかかるのだろう。
「泊まっていきなよ。
俺はソファーで寝るからさ。」
先ほどの笑顔が嘘のように、突然佐久間さんは真剣な顔つきでそう言った。