第6章 距離感
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目覚めると、膝の上にコロはいなかった。
ぼんやりとした頭。
ふと、人の気配を感じ横を向く。
そこには膝にコロを乗せた佐久間さんの姿があった。
「起きた?」とコロを撫でながら佐久間さんは笑う。
「…おかえりなさい。」
突然の出来事に私の顔は赤くなった。
「…いつ、戻られたんですか?」
「15分位前かな?」
「すみません…私、寝ちゃって。」
「いや、いいんだよ。」
時計を見ると午前0時をまわっていた。
こんなに眠るつもりはなかったが、よほど疲れていたのだろう。
ここ最近は佐久間さんの家に通いつめ、アパートに帰る頃には深夜になっている事もあった。
「今日は泊まっていくといいよ。」
「いえ…帰ります。」
そうは言ってみたが、帰る電車はもうない。