第6章 距離感
「思ったんだけどさ…」
佐久間さんは箸を止め、突然真剣な眼差しを向けた。
「俺、あんまり家にいないからさ、ここに住めば?」
「え?」
「いや…、通ってくるのも大変じゃない?
部屋なら空いてるし。」
「…冗談ですよね?」
「いいや、冗談じゃないよ。
それに俺はもともとあまり冗談言わないよ。」
佐久間さんはそう柔らかな表情で笑う。
恋人同士であれば自然な成り行きなのかもしれない。
しかし、私達は恋人同士などではない。
ただの…
友達というのも不自然だが、あまりにも唐突に距離を縮めすぎではないかと思う。
「先生が嫌ならいいけど。」
「嫌ではないですけど…」
「あまり深く考えないでよ。
アパートの部屋はそのままにして、俺のいない時に泊まっていけばいいじゃん。
“セカンドハウス”的な?」
「そんな事…」
「俺ももう離れたくないし…コロと。」
そういたずらに笑う佐久間さんに胸が熱くなった。