第2章 高校教師
シャワーを浴び、冷蔵庫を開けると水がない事に気が付いた。
時計を見ると午後11時。
明日の帰りにでも買ってくれば良いのだが、悶々としたこの気持ちを断ち切るべく、財布を持って部屋を出る。
近くのコンビニまでは片道5分。
目の前の公園を突っ切れば3分ほどの距離だった。
この街で暮らすようになってから、水がいかに大切な物なのかが分かった。
故郷の北国では、当たり前のように水道水を飲んでいた。
もちろん料理に使うのも全て水道水だった。
しかし、この街の水道水はとても飲めたものではない。
お金を出し、ペットボトルの水を買う。
今では当たり前になってしまったが、初めの頃は何て不経済なのだと驚いた。
音を立てぬよう、ゆっくりとアパートの階段を下りる。
遠くを走る車の音がわずかに聞こえる。
“眠らない街”と形容されるこの街も、真夜中の住宅街は故郷の北国とさほど変わらずとても静かだ。
見上げれば、建物の隙間から藍色の夜空が見える。
しかし、その夜空に星は見当たらない。
街の明かりに照らされた雲が、ただ風に流されているだけだ。