第6章 距離感
佐久間さんは私を喜ばせるのが上手だ。
そんな事を言われたら、毎日でもここへ通いたくなる。
私だって、毎日佐久間さんにお味噌汁を作ってあげたい。
「部屋、探してるの?」
「あっ…はい。なかなか見つからなくて。」
「焦んなくてもいいよ。」
「…ありがとうございます。」
「俺もいなくなったら寂しいし。」
「え?」
「コロがいなくなったら寂しい。」
一瞬…私の事を言われたのかと思い、戸惑った。
そんな事はない。
佐久間さんはただの“猫好き”だ。
「福岡、思ったより寒かったよ。」
「そうだったんですか。」
「皮ジャン着て行って正解だった。」
広いキッチンで食事を作りながら、他愛もない話をする。
まるで恋人同士のようだと錯覚する。
胸の鼓動が止まらない。
自分が思っている以上に、私は佐久間さんの事が好きなのかもしれない。